カチオン電着塗装のメリットとデメリット|他塗装法との比較を解説

カチオン電着塗装のメリットとデメリット|他塗装法との比較を解説

カチオン電着塗装とは、通電を利用して塗料を被塗物に析出させる塗装です。主に金属製品の表面処理に用いられ、優れた防錆力が特徴です。複雑な形状の部品でも均一な膜厚で塗装を実現できるため、きれいな外観に仕上がります。

さらに、塗装工程は全自動大量のため生産に適しており、効率的な生産が可能です。カチオン電着塗装による塗膜は製品の長寿命化にも寄与します。また、水性塗料の使用により、環境負荷が低く、廃棄物の削減やVOCの排出抑制にも効果があります。

こうした多くのメリットから、カチオン電着塗装は製造業において広く採用されている塗装方法です。当コラムでは、カチオン電着塗装のメリットとデメリットについて解説します。

カチオン電着塗装のメリット

高い防錆力

カチオン電着塗装によって析出した塗膜は、優れた防錆力を持ちます。これにより、製品の長寿命化が図れます。

均一な膜厚

カチオン電着塗装は、通電性を利用して塗料を被塗物に析出させる技術です。このため、複雑な形状の部品でも均一な膜厚で塗装を実現できます。これにより、品質のバラツキが少なく、外観も向上します。

効率的な塗装

塗装は設備によって全自動で行います。自動化により、人による塗装作業のムラを無くし、高速かつ大量生産が可能となります。また、塗料の無駄が少なく、コスト削減にも寄与します。

環境にやさしい

カチオン電着塗装は、水性塗料を使用することが多く、揮発性有機化合物(VOC)の排出が少ないため、環境負荷が低いです。また、塗料の回収・再利用が容易で、廃棄物の削減にもつながります。これにより、環境規制への対応もスムーズに行えます。

カチオン電着塗装のデメリット

多額の設備投資が必要

カチオン電着塗装設備の導入には高額な初期投資が必要です。電源装置、塗装処理槽、排水・排気装置など、専用の設備が必要となるため、小規模な製造業者には負担が大きいかもしれません。

対応素材の制限

通電を利用して塗装を行う特性から、通電性のある素材にのみ塗装ができます。鉄への塗装を得意としており、鉄以外の金属への塗装は難しい場合があります。そのため、素材選びに制限が生じることがあります。

色が限定される

カチオン電着塗装では、1つの設備につき1色のみの対応になります。そのため、色の融通が利きません。基本は黒色のみの対応になります。

カチオン電着塗装は、そのメリットから多くの製造業で採用されていますが、導入にはデメリットも考慮する必要があります。最適な塗装方法を選ぶためには、自社の製品や生産ラインに適した技術を慎重に検討することが重要です。

他塗装法との比較

塗装にはカチオン電着塗装以外にもさまざまな方法があります。以下の表は各種塗装方法別に特徴をまとめたものです。

項目 カチオン電着塗装 吹付塗装 粉体塗装 静電塗装 溶剤塗装
防錆力
密着性
つきまわり性
膜厚の均一性
生産性
環境負荷
コストパフォーマンス
外観のムラ
設備コスト
部品形状への対応
対応素材範囲
塗装色
職人の塗装技術 不要 必要 必要 必要 必要

凡例: ◎ 優れている ○ 良い △ やや劣る

カチオン電着塗装は、防錆力、密着性、膜厚の均一性に優れており、熟練工が必要ないため、大量生産や連続生産に適しています。ただし、品質管理には熟練者が必要です。

デメリットとしては、設備コストが高い点、通電性のある素材に限定される点、黒以外の塗装が難しい点が挙げられます。

しかし、水溶性で溶剤による大気汚染がなく、有害金属を含まず、引火性が低い安全な方法です。塗料のロスも少なく、SDGsに適した環境に優しい塗装方法です。部品塗装を検討する際には、用途や形状、素材、コストを考慮し、適切な塗装方法を選ぶことが重要です。

カチオン電着塗装ならタマ化工へ

タマ化工は40年以上の実績があり、確かな品質をお客様にお届けしています。カチオン電着塗装をご検討の方はお気軽に見積依頼や技術相談のご連絡をいただければ幸いです。